ヤナギラン Epilobium angustifolium



ヤナギラン
(高根村 2003. 8.3)

中部地方以北の日当たりのよい草地に生える多年草。森林の伐採跡や山火事跡などにいち早く入り込んで、一面に群生し、花のころは非常に美しい。また、山岳道路に沿った草地や湿った草地など、肥えた腐植土の土地であればどこでも生える。ヤナギランはヨーロッパ、アジア、北アメリカなど、北半球の温帯に広く分布し、カナダやアラスカなどでも針葉樹林帯の山火事跡に大群落をつくることからFire weedと呼ばれている。和名は柳蘭で、葉の形が柳の葉によく似ていて、ランのような花を咲かせることによる。根茎は長くのびてふえる。茎は高さ1〜1.5mとなり、ほとんど枝分れせず直立する。葉は多数互生し、細長い披針形で長さ8〜15cm、幅1〜3cmあり、葉柄はほとんどない。なかほどの葉がもっとも大きく、下部の葉は花の咲くころには枯れる。葉の先はとがり、ふちにごく小さな鋸歯があるが目立たない。裏面は粉白色を帯びる。夏に周辺の草より高く立ち、先端に長さ10〜45cmの花序を総状につけ、多数の紅紫色の花が下から順に咲き上がる。花は径2〜3cmあり、花弁は4個で長さ1.5cm内外。萼片は細く長さ約1.5cmで深く4裂し、外側に短毛が生え、花とともに落ちる。花柄のつけ根には線形で長さ3〜5mmの苞葉がある。雄しべは8個で、長短があり、長さ7〜12mm。雌しべより先に熟し、花粉を散らしてしおれる。そのころ、それまで曲がっていた雌しべの花柱がのびて長さ1.5cmほどになり、柱頭は深く4裂してそり返る。刮ハは長さ5〜8cmで、熟すと縦に4つに裂け、なかから白い絹毛をつけた1mmほどの種子が多数でて、風に乗って飛び散る。葉が無毛で東北地方から北海道に分布する種をヤナギラン、有毛で本州中部から東北にかけて分布するものをウスゲヤナギランとして区別することもある。
花期:7〜8月、生育地:山野

参考文献:「山渓カラー名鑑 日本の野草」山と渓谷社
               「葉でわかる樹木」625種の検索 馬場多久男 信濃毎日新聞社